カマストガリザメ - サメ水族館

カマストガリザメ（Spinner Shark）基本データ
① 外見の特徴
② 生態・行動
③ 食性と狩りの方法
④ 繁殖・成長
⑤ 繁殖・成長（補足）
⑥ 人との関係・保護
⑦ 観察・展示情報
関連動画

カマストガリザメ（Spinner Shark）基本データ

和名 / 英名 / 学名	カマストガリザメ／ Spinner Shark ／ Carcharhinus brevipinna 英名は水面上で回転しながらジャンプする習性に由来。
分類	軟骨魚綱 Chondrichthyes ／メジロザメ目 Carcharhiniformes ／メジロザメ科 Carcharhinidae ／メジロザメ属 Carcharhinus
体長・体重	通常全長2.0〜2.5 m、大型個体は〜3.0 m前後。体重は40〜90 kg級（最大100 kg超の報告）。体型は細長く筋肉質。胸びれが長めで“高速型”のプロポーション。
分布海域	世界の熱帯〜亜熱帯の沿岸〜外洋大陸棚域に広域分布。大西洋西部（米東岸〜メキシコ湾〜ブラジル）、東部（モロッコ〜西アフリカ）、インド洋（紅海・東アフリカ〜インド）、太平洋西部〜中部（東南アジア・北オーストラリア・ニューカレドニア・ポリネシアなど）。日本では南西諸島域で記録。
生息深度	主に表層〜中層の0〜100 m帯を回遊（ときに200 m超）。沿岸砂州・沖合大陸棚・河口外側などに出現。
IUCNレッドリスト	VU（Vulnerable／危急）。沿岸・沖合漁業での混獲・狙い獲り、成長遅め・少産により減少傾向。
識別ポイント	長い尖った吻と、体高低めの細長い体。胸びれ・第一背びれ・第二背びれ・尾びれなど多くの鰭先に黒色斑（縁取り）。肛門（臀）鰭＝“臀鰭（anal fin）の先端も黒い（これが外洋性ブラックチップ C. limbatus との重要識別点）。背びれ間の稜（interdorsal ridge）が明瞭。第一背びれの基部は胸びれ後端よりわずかに後方。水面近くでスピンしながらジャンプ（スピナー）する行動が有名。小魚群を下から突き抜けて空中回転する。

近似種：ブラックチップシャーク（C. limbatus）は肛門鰭先端が黒くない個体が多く、第一背びれ位置や体高もやや異なる。
目撃時は「肛門鰭の先端色」「背びれ間稜の有無」「体型（細長いか）」をチェックすると識別が確実です。

① 外見の特徴

カマストガリザメ（Carcharhinus brevipinna）は、細長い流線型の体と長い尖った吻、そしてほとんどの鰭先に入る黒色マーキングが印象的です。胸びれ・第一背びれ・第二背びれ・尾びれだけでなく、 肛門（臀）鰭の先端まで黒い個体が多く、近似のブラックチップ（C. limbatus）との識別点になります。

背側は鉛灰〜ブロンズがかった灰色、腹側は白色で体側に淡い境界線。第一背びれは中型で、 背びれ間の稜（インタードーサル・リッジ）が明瞭。胸びれは長く鎌状で、高速遊泳に適した“高速型プロポーション”です。

② 生態・行動

熱帯〜亜熱帯の沿岸〜大陸棚外縁（おおむね0〜100m）を広く回遊。季節や餌資源に合わせて沿岸と沖合を行き来し、群れでベイトフィッシュ（カタクチイワシ類・ニシン類・サバ類など）を追う姿がよく観察されます。

名の通り、獲物群を突き抜けながら水面上で連続回転（スピン）してジャンプする行動が有名。これは群れの中心を垂直加速で貫通→回転しながら口と体側で小魚をかき集めるフィーディング戦術と考えられています。若齢個体は湾内・ラグーン・河口外側などのナーサリーを利用し、サイズ・性で行動圏が分かれる サイズ・セグリゲーションが見られます。

③ 食性と狩りの方法

食性は小〜中型の回遊性硬骨魚中心。イワシ・ニシン・サバ・ボラ・カツオ類の若魚、ボニート、ムロアジ類などの群れを主に捕食し、地域によってはイカ類も重要な餌となります。

狩りは低層からの垂直突進＋スピンが典型。側線で群れの稠密部を捉え、加速して群れを突き抜けながら体を素早く回転させて複数個体を連続で口に収める効率的な手法をとります。波打ち際や防波堤際では、ベイト群を壁際に追い詰める“ヘルディング”も見られます。

④ 繁殖・成長

繁殖は胎盤性胎生。妊娠期間はおおむね11〜15か月で、産仔数は3〜15尾（多くは6〜12）。出生時全長は約55〜75cm。出産は沿岸の浅場（湾・ラグーン・河口外側）で行われ、ナーサリーとして利用されます。

性成熟は雄で約150〜180cm、雌で約170〜200cm（地域差あり）。寿命は15〜20年以上と推定。成長は中速〜やや遅めで、資源管理上は未成魚の保護とナーサリー保全が重要になります。

現場識別では「肛門鰭先端の黒」「背びれ間の稜」「細長い体と長い胸びれ」を同時に確認すると、近縁種との取り違えを防げます。

⑤ 繁殖・成長（補足）

カマストガリザメ（Carcharhinus brevipinna）は胎盤性胎生で、胚は卵黄嚢が胎盤化して母体から栄養を受けて育ちます。妊娠期間はおおむね11〜15か月、産仔数は3〜15尾（多くは6〜12）。出生時55〜75cmと比較的大きく生まれます。

繁殖周期：地域により年産〜隔年が報告。出産は沿岸の浅場（湾・ラグーン・河口外側）で行われることが多い。
ナーサリー：温暖で濁りのある浅場を新生仔が利用。捕食圧が低い環境が選好される。
成熟サイズ：♂ 約150–180cm／♀ 約170–200cm（海域差あり）。
寿命・成長：寿命は15〜20年以上、成長は中速〜やや遅め。

成熟が遅く、産仔数も限られるため再生産力は高くない。資源管理にはナーサリーの保全と未成魚の保護が不可欠です。

⑥ 人との関係・保護

本種は沿岸・大陸棚域で商業漁業・レクリエーション漁にかかりやすく、肉・鰭の利用や混獲が主要な圧力となっています。一方、スピンしながらのジャンプなどダイナミックな行動は映像・観光資源としての価値も高い種です。ヒトに対する積極的な攻撃性は高くないものの、ベイト群や漁獲残渣がある状況では接近しやすいため注意が必要です。

主な脅威	沿岸延縄・刺網・定置での混獲・狙い獲り／鰭需要／ナーサリーの劣化（沿岸開発・埋め立て・水質悪化）
保全状況	IUCN評価：VU（危急）。一部海域で漁期・サイズ規制、保持禁止やキャッチ＆リリース推奨が導入。
混獲低減	太軸サークルフック／餌種・枝縄長の最適化／操業水深の調整／迅速な船縁リリース・デハッキングツール活用
社会・教育的価値	外洋〜沿岸のベイト群制御に寄与する中上位捕食者。行動展示や科学コミュニケーションの題材として人気。