ヨゴレ(Oceanic Whitetip Shark)基本データ
| 和名 / 英名 / 学名 | ヨゴレ / Oceanic Whitetip Shark / Carcharhinus longimanus |
|---|---|
| 分類 |
メジロザメ目(Carcharhiniformes)メジロザメ科(Carcharhinidae) メジロザメ属(Carcharhinus) |
| 体長・体重 |
成魚体長:平均2.5〜3.0m(最大約4m) 体重:100〜170kg前後(最大記録 約200kg) |
| 分布海域 |
世界中の熱帯〜亜熱帯の外洋(太平洋・インド洋・大西洋)に広く分布。 日本近海では黒潮域(小笠原・沖縄・南西諸島)で確認例あり。 |
| 生息深度 |
主に水深0〜150mの表層・外洋性。 日中は海面近くをゆっくり遊泳し、夜間に中層を移動する。 |
| IUCNレッドリスト |
CR(絶滅危惧ⅠA類) — 漁獲圧・混獲・鰭目的漁業により著しい減少傾向。 近年30年間で世界的に個体数が70〜90%減少したと推定される。 |
| 識別ポイント |
|
① 外見の特徴
ヨゴレ(Carcharhinus longimanus)は、外洋をゆったり巡航する長大で丸い先端の胸びれが最大の特徴です。 第一背びれも大きく先端が丸く、胸びれ・背びれ・尾びれの先端に白い斑点(白色縁取り)が入る個体が多く、遠目でも見分けやすいサメです。 体はずんぐりとして体高があり、吻はやや短く丸い形。体色は背側が灰褐〜青灰色、腹側は白色です。
眼は中型で瞬膜を備え、歯は上顎がやや幅広の三角形、下顎は細めの鋭い歯が並びます。 いわゆるインタードーサル・リッジ(第一背びれと第二背びれの間の稜線)が明瞭で、 同所のメジロザメ類との識別にも役立ちます。
② 生態・行動
熱帯〜亜熱帯の外洋表層(おおむね0〜150m)を主な活動域とし、日中は海面付近を低速で巡航することが多いサメです。 他魚種(カツオ・マグロ)や回遊性海鳥・イルカが集まる水塊に付き従い、漁業船・漂流物・難破船・鯨の死骸などにも高確率で集まります。
行動は大胆かつ強い好奇心が特徴。単独~少数での行動が多く、表層で陽光を浴びながら胸びれを水平に広げて漂う姿が典型です。 パイロットフィッシュ(コバンザメ類)や各種遊泳性小魚を従えることも多く、相利的な関係が見られます。
③ 食性と狩りの方法
食性は機会捕食+スカベンジャー。トビウオ・サバ科・マグロ幼魚などの表層性硬骨魚、 イカ類、甲殻類を捕食するほか、鯨の死骸や漁獲残渣にも積極的に集まります。
狩り方は、群れの縁で執拗に追い立てて弱った個体を選択、あるいは船や漂流物の陰に獲物を追い込むといった外洋型の戦術が中心。 嗅覚と視覚で広範囲から匂い・シルエットを検出し、低速巡航から短距離の加速突進で噛みついて引き裂きます。 表層での強い波間・白泡の中でも定位しやすいのが得意です。
④ 繁殖・成長
繁殖は胎盤性胎生(yolk-sac placenta)で、妊娠期間は概ね10〜12か月。 産仔数は通常2〜6尾(海域により1〜15の報告)で、出生時全長は約45〜65cm。 多くの海域で隔年繁殖が示唆されています。
成熟は雄で約180〜200cm、雌で約190〜210cmが目安。 成長は中〜遅速で、寿命は20年以上と推定されています。外洋性で分散が広く、回遊経路に沿った国際的な管理が資源維持の鍵になります。
外洋の上位捕食者として、生態系の栄養塩循環や死骸処理(スカベンジング)に寄与します。
一方、成長が遅く産仔数が少ないため、過剰漁獲に脆弱です。
⑤ 繁殖・成長(補足)
ヨゴレ(Carcharhinus longimanus)は胎盤性胎生(yolk-sac placenta)。 交尾後、胚の卵黄嚢が胎盤化して母体と連結し、栄養供給を受けて成長します。妊娠期間はおおむね10〜12か月。 産仔数は通常2〜6尾(海域により1〜15の報告)で、出生時全長は45〜65cm程度です。
- 繁殖周期:多くの海域で隔年繁殖が示唆。
- 成熟サイズ:♂ 約1.8–2.0m/♀ 約1.9–2.1m。
- 成長・寿命:中〜遅速。寿命は20年以上と推定。
- ナーサリー:外洋端〜大陸棚縁の暖水域・島嶼周辺の浅めの海域を幼魚が利用する例が知られる。
外洋回遊性が高く、繁殖海域・出産海域の特定は地域差が大きい。海域別の長期モニタリングによる上書きが重要です。
⑥ 人との関係・保護
外洋延縄・流網・はえ縄・刺網で混獲されやすい代表種。肉・鰭の利用や漁獲後の投棄による死亡が資源に影響します。 一方で、ダイビング観光地では外洋での観察対象となることもあります。性格は非常に好奇心旺盛で、 漂流物や船に近づく傾向が強く、海難の文脈では歴史的に注意が必要なサメとして知られてきました。
| 主な脅威 | 鰭・肉目的の漁獲/延縄・流網での混獲/CPUEの低下(個体数減少)/外洋ごみへの集積・誤食 |
|---|---|
| 保全状況 |
IUCN:CR(絶滅危惧ⅠA類)。 CITES:附属書Ⅱ(国際取引規制)。 多くの地域漁業管理機関(RFMOs)でフィニング禁止・リリース推奨、一部は保持禁止措置あり。 |
| 混獲低減(例) | 太軸サークルフック・餌種変更・夜間曳縄・浅掛け回避・デハッキングツールの常備・船上での迅速放流 |
| 安全ガイド | 外洋でのスノーケリング/漂流物周辺での遊泳は回避。水面でのバシャバシャ音・血餌の匂いがある状況では入水しない。 |
⑦ 観察・展示情報
強い回遊性と広い遊泳空間を必要とするため、長期飼育・展示は極めて困難。 一時的な収容例はあるものの、安定展示の事例は稀です。観察は主に外洋ダイビングで行われ、 暖かい外洋島嶼域や回遊魚の集まる湧昇帯・潮目が有望ポイントとなります。
- 観察のコツ:海況の良い朝夕の表層、漂流物・ブイ周り、マグロ・カツオ群の外縁部をチェック。
- 識別の決め手:丸く大きい胸びれ+白い先端斑、のんびりした水平巡航。
- 展示条件(仮に収容する場合):超大型円形水槽・強い換水・高溶存酸素・単独/少数飼育・ストレス最小化の搬送。
図鑑ページでは、胸びれ先端の白斑アップ、外洋表層を水平に漂う全身シルエット、似種(シロワニ・ニシレモンザメ等)との第一背びれ形状比較図を並べると識別が格段に容易になります。




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