コブシザメ - サメ水族館

基本データ（コブシザメ）
① 外見の特徴
② 生態・行動
③ 食性と狩りの方法
④ 繁殖・成長
① 外見の特徴
② 生態・行動
③ 食性と狩りの方法
④ 繁殖・成長
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基本データ（コブシザメ）

和名 / 英名 / 学名	コブシザメ／ Bramble Shark ／ Echinorhinus brucus 別名：ブランブルシャーク（Bramble＝「茨」）
分類	軟骨魚綱 Chondrichthyes ／ネズミザメ上目 Galeomorphii ／コブシザメ目 Echinorhiniformes ／コブシザメ科 Echinorhinidae 現生では本種を含むわずか2種のみ（もう1種：アフリカコブシザメ E. cookei）。
体長・体重	通常2〜3 m。最大記録は約3.1 m、体重は〜200 kg前後。雌の方が雄よりやや大きく成長します。
分布海域	世界の温帯〜熱帯域に広く分布（大西洋・インド洋・太平洋）。日本近海では相模湾〜土佐湾、九州南部、沖縄周辺などから報告。底層性だが外洋寄りにも出現。
生息深度	通常200〜900 m。報告では最大1,200 m前後まで確認。海底に近い砂泥底・岩礁域の斜面を好み、夜間にはやや浅所へ浮上する個体もあります。
IUCNレッドリスト	Endangered（絶滅危惧）（2020年版 IUCN Red List）広域分布だが記録が非常に稀で、混獲・深海漁業の影響が懸念されています。
識別ポイント	体表に大小の「コブ状の棘（皮歯）」が密生。これが「Bramble（茨）」の由来。背びれは2基のみで、両方とも小さく尾に近い位置。肛門鰭を欠く原始的な形態。体色は暗灰〜黒褐色で、皮歯が金属光沢を帯びる。口は広く、歯は大きな三角形で鋸歯状。底生魚やイカなどを捕食。

① 外見の特徴

コブシザメ（Echinorhinus brucus）は、全身に散在する大きなコブ状の皮歯（棘）が最大の識別点です。皮歯は丸い“瘤”や楕円のプレートが重なったように見え、個体によっては金属光沢を帯びます。体形は太く短い紡錘形で、背びれは小型のものが2基、どちらも体の後半（尾寄り）に位置します。 肛門鰭がないのも原始的な形質で、頭部には大きめの噴水孔（スパイラクル）が開き、底層での呼吸を助けます。

口は広く、歯は大きい三角形で鋸歯状。暗灰〜黒褐色の体色で腹側はやや淡色、巨大な棘の配置は左右非対称で、個体差が大きいのも特徴です。遊泳筋は発達しすぎず、全体に厚い皮膚とフラビーな質感が目立ちます。

② 生態・行動

主に大陸棚外縁〜大陸斜面（およそ200〜900 m）の砂泥底・礫底・岩礁域に棲む底生〜半底生の深海ザメです。地域や季節によってはより深い1,000 m超や、夜間に浅所へ移動する例も記録されています。行動は省エネ型で、海底近くをゆっくり巡航しながら餌の匂いや電気信号を探知します。

単独性が強く、群れを作ることは稀。地形（谷・崖・起伏）に沿って定常的に利用するコースをもつと考えられます。水温・酸素・餌密度の変動に敏感で、出現は散発的。「記録自体が少ない稀種」で、フィールド情報は混獲・調査捕獲に依存しています。

③ 食性と狩りの方法

食性は肉食性で、底生魚（タラ類・メルルーサ類など）、中深層性の小〜中型魚、イカなどの頭足類、大型甲殻類を捕食します。また、機会があれば死骸（スカベンジング）にも集まります。

狩りは待ち伏せ＋短距離の急襲が基本。強い嗅覚と側線で位置を把握し、接近後に大きな口で吸い込みつつ、鋸歯状の大きな歯で肉片を噛み切る／引き裂くスタイルです。俊敏な追跡よりも「一撃の重さ」と保持力で獲物を得る、深海型の捕食戦略といえます。

④ 繁殖・成長

繁殖様式は卵胎生（無胎盤性胎生）で、胚は母体内の卵黄を栄養に発育してから出生します。産仔数は少数〜数十匹規模と推定されますが、地域差・年差が大きく、確かなデータは限られています。新産仔は40 cm前後の報告が多く、出生時から皮歯の瘤状棘が目立ちます。

成長は遅く、成熟サイズは雄で1.8〜2 m前後、雌は2.3〜2.6 m以上とされる例が多いです（海域により変動）。深海性で代謝が低く世代時間が長いため、個体群の回復は緩やか。生息情報・繁殖情報の不足が管理上のボトルネックになっています。 ※数値は各海域の報告値にばらつきがあり、今後の標本・テレメトリー研究で更新される可能性があります。