ヨスジリーフシャーク

サメ図鑑

🦈 ヨスジリーフシャーク ― サンゴ礁に住む“浅瀬の狩人”

和名 / 英名 / 学名 ヨスジリーフシャーク / Whitetip Reef Shark / Triaenodon obesus
分類 テンジクザメ目(Lamniformes)/ リーフシャーク科(Carcharhinidae)/ リーフシャーク属(Triaenodon
体長・体重 平均:全長 1.2〜1.6 m(20〜30 kg)/ 最大:約1.9 m
分布海域 インド洋〜太平洋の暖海域、サンゴ礁に密着。日本では沖縄・八重山・小笠原近海で記録あり。
生息深度 浅瀬〜40 m 程度。夜間は50〜70 mへ移動することも。
IUCNレッドリスト NT(準絶滅危惧) ※2016年版評価
識別ポイント 背びれ・尾びれ先端が白く縁取られている/ 細長い体・先細の吻/ 夜間に活発

外見の特徴

ヨスジリーフシャークの最も分かりやすい特徴は、背びれおよび尾びれの先端に入る白い縁取り(ホワイトチップ)です。体色は灰褐色〜薄茶色で、体側に目立つ模様は少なく、サンゴ礁の岩陰に擬態しやすい配色です。吻は細長く先端が尖り、口元から少し上がった位置に目があります。全体に細身で力強さよりも敏捷さを感じさせるフォルムです。

夜行性ゆえに昼間は岩陰やラグーンの隙間で休む姿が観察され、撮影時は背びれだけが水面に飛び出していることもあります。似た種である「サメ類リーフシャーク(Whitetip Sand Shark など)」とは、体型と白い縁取りの入り方・尾びれ形状で区別できます。

生態・行動

ヨスジリーフシャークは典型的なサンゴ礁依存型サメで、昼間は岩陰やサンゴの裂け目に静止していて、夜になると活動を始めます。夜間狩りの時間帯にはサンゴ礁内の浅場やラグーン内をゆっくりと泳ぎ、魚や頭足類を探します。活動範囲は比較的狭く、定住的な傾向が強いことが研究から明らかになっています。

社会性もあり、複数匹が近接して同じ穴や亀裂に休む姿が報告されています。休息時には殆ど動かず、水流と砂の流れに身をまかせて漂っている状態です。捕食者としては大型サメや人間による干渉が少ないため、生態系の中で比較的安定したポジションを保っています。

食性と狩りの方法

主な食性は小魚、頭足類(イカ・タコ)、甲殻類などです。サンゴ礁内でじっと待ち構え、夜になってから活動を始めることで、餌の警戒が緩むタイミングを狙います。 尖った吻を岩やサンゴの裂け目に差し込み、獲物を追い出すような狩り方も観察されています。

他のサメが高速追尾型の狩りをするのに対し、この種は**低速・精確・機をうかがう型**。その分、エネルギー消費を抑えつつ、サンゴ礁という資源豊富な環境を有効活用しています。歯も細長く尖っており、硬い殻のある獲物やサンゴ裂け目の中の生物を突き刺す能力に優れています。

繁殖・成長

ヨスジリーフシャークは胎生のサメで、妊娠期間はおよそ12か月前後。1回に生まれる仔ザメは2〜5匹ほどで、体長50〜60cmほどの小型個体として誕生します。母ザメはサンゴ礁の内側やラグーンの穏やかな浅場を出産場所として選び、仔ザメはそこでしばらく成長します。 成長は比較的遅く、成熟までには8〜9年を要するとされます。寿命はおよそ20年。繁殖力が高いわけではないため、乱獲や観光圧の影響を受けやすい種です。

出産時期は地域差があり、インドネシアやパラオでは夏季、日本近海では初夏〜秋にかけてがピークです。仔ザメのうちは外敵が多く、成魚になるまでの生存率は高くありませんが、群れでの生活や岩陰での隠れ方を学習するなど、生態的な適応を見せます。

人との関係・保護状況

ヨスジリーフシャークはダイバーに最も人気のあるサメのひとつです。 サンゴ礁の浅瀬で日中に寝ている姿が観察でき、夜間には活動的な泳ぎを見せるため、昼夜を通じて観察が楽しめます。 性格は非常に温和で、ダイバーが近づいても逃げるか、興味を示して数メートル離れて旋回する程度です。

人を襲うことはほぼなく、危険性は極めて低い種に分類されます。 一方で、観光地での過剰な接近や照明撮影によるストレスが報告されており、近年は「観察距離5m以上」といったガイドラインが設定される地域もあります。 IUCNではNT(準絶滅危惧)に指定され、過剰漁獲の防止やサンゴ礁の保全が今後の鍵になります。

また、リーフシャーク類は生態系のバランスを支える「中間捕食者」としても重要です。 彼らがいなくなると、サンゴ礁の小魚が過剰に増え、生態系全体の均衡が崩れることが指摘されています。 観察と保護が両立する“サメツーリズム”の成功例として、モルディブやパラオの保護区管理は世界的にも注目されています。

観察・展示情報

  • 国内展示:沖縄美ら海水族館、いおワールドかごしま水族館、鳥羽水族館などで展示実績あり。
  • 観察スポット:パラオ、モルディブ、石垣島・西表島周辺などのサンゴ礁域。ナイトダイブで高確率で遭遇。
  • 観察のコツ:昼間はサンゴ礁の割れ目や洞窟の中を探す。光を当てすぎず、静かに近づくことで逃げにくくなる。

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