サメはサンゴみたいに固定して“群生”するわけではないのに、世界には「ここに行くとサメが固まっている」という場所が確かにあります。こういう現象は生態学的には**アグリゲーション(集合・集群)**と呼ばれることが多く、だいたい次のどれかの理由で起きます。
- 休む・流れを利用する(省エネ)
- 繁殖や産卵など、季節イベントに集まる
- 子どもが育つ“保育園”(ナーサリー)
- 餌が周期的に湧く(プランクトンや魚卵など)
- 人間の餌付けで集まる(人工的な集合)
以下、具体的な“群生(集合)スポット”を、サメの名前とセットで見ていきます。
海山・外洋島の集合:アカシュモクザメの“昼間だけの大集団”
外洋の島や海山の周りで、圧巻の群れを作る代表がアカシュモクザメ(Sphyrna lewini)です。ココ島(コスタリカ)など東太平洋の海洋島では、アカシュモクザメが大規模な集合を作ることが知られていて、タグ研究では「ずっと島にいるわけではなく、日中に島周辺へ寄りやすい」といった“流動的な集合”の性格も示されています。
つまり「住んでる」より「寄り合い」。島の周りの地形・潮・(しばしば)クリーニング行動など、複数要因が重なって“集まりやすい場”が生まれます。
リーフの巨大集団:ファカラバ南パスのオグロメジロザメ“壁”
サメの集合で有名な景色のひとつが、フランス領ポリネシア・ファカラバの南パス。ここではオグロメジロザメ(Carcharhinus amblyrhynchos)が、潮流の条件などによって数百規模で固まることが知られています。
このタイプの集合は、“みんなで獲物を追い回す”というより、地形と流れを使った省エネ/待ち伏せの色が濃い。サメが「群れの動物」に見えてくる瞬間です。
季節の大集合:ジンベエザメが集まる“食のパルス”
「サメの群生」と聞いて、いちばんイメージしやすいのはジンベエザメ(Rhincodon typus)かもしれません。西オーストラリアのニンガルーでは、ジンベエザメが毎年のように沿岸近くへ現れ、州政府の情報でも3月〜7月に最も確実に見られるとされています。
ポイントは“サメが集まる”というより、海の生産性が跳ね上がるタイミング(餌のパルス)に、彼らが寄ってくること。集合の主役はサメではなく、海の都合です。
“保育園”としての群生:レモンザメのナーサリー(ビミニ)
成体が集まるだけが群生場所ではありません。沿岸の浅い入江やマングローブは、サメの子どもにとってのシェルターになり、**ナーサリー(保育場)**として機能します。
バハマのビミニでは、**レモンザメ(Negaprion brevirostris)**のナーサリーが大規模かつ研究例として有名で、「幼魚が集まって育つ場所」が生態系の要として語られます。
このタイプの“群生”は、派手な大群ではなく、地味だけど重要。ここが壊れると、その海域のサメの未来が細ります。
人間が作る集合:ベリーズ「シャーク・レイ・アレー」のコモリザメ
最後に、ちょっと注意が必要な“群生場所”も入れておきます。
ベリーズのホルチャン海洋保護区(通称 Shark and Ray Alley)では、**コモリザメ(Ginglymostoma cirratum)が集まりやすい場所として知られていますが、研究機関は、観光事業者が餌で誘引するプロビジョニング(餌付け)**が関与していることを明確に述べています。
ここで見られる“集合”は、自然のパターンに人間が上書きしたもの。良い悪いを単純に言うより、「群生に見える光景にも種類がある」と知っておくと、サメの見方が一段深くなります。
小笠原の“日本でここだけ感”:シロワニが休む海
小笠原で「集まりやすいサメ」として外せないのが、シロワニ(Carcharias taurus)です。日本近海で安定して名前が挙がる理由は、単に目撃例があるからではなく、特定の時期・特定の場所で“まとまって休む”という集合の性格がはっきりしているからです。報告ベースでは、小笠原では成体が中心に観察され、岩礁やドロップオフのような地形の陰で、複数個体が同じエリアに滞在することがあります。とくに季節性が語られやすく、冬から初夏にかけて(目安として2〜6月頃)に「会える確率が上がる」とされるのも特徴です。外洋の回遊サメのように一瞬で通り過ぎる群れというより、コンディションの合う場所に“腰を落ち着ける”タイプの集まり方なので、出会えたときの説得力が強い。加えて、小笠原の海は海洋保護の文脈でも注目されるため、シロワニの集合は「迫力のある見どころ」であると同時に、「この海域がサメにとって重要な休息・滞在の場になっている」というサインとしても語れます。
まとめ:サメの“群生場所”は、海の設計図が透ける場所
アカシュモクザメが集まる外洋島(ココ島など)は、海山と潮の交差点。
グレイリーフシャークが固まるパス(ファカラバ南パス)は、地形と流れが作る“休憩所/待ち伏せ場”。
ジンベエザメの季節集合(ニンガルー)は、海の生産性が跳ねる“食の季節”。
レモンザメのナーサリー(ビミニ)は、サメの未来が育つ“子育て湾”。
コモリザメの集合(ベリーズ)は、人間の関与が作る“観光型の集群”。
シロワニの(小笠原)は、重要な休息・滞在の場



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