アオザメ（Shortfin Mako） 基本データ
| 和名 / 英名 / 学名 |
アオザメ ／ Shortfin Mako ／
Isurus oxyrinchus
“マコ”の名で知られる回遊性の高速サメ。学名は「尖った吻」を意味。 |
|---|---|
| 分類 |
軟骨魚綱 Chondrichthyes ／ メジロザメ目（＜正しくは＞Lamniformes）／
ネズミザメ科 Lamnidae（ホホジロザメ・アオザメ・ニタリの仲間）
体温を周囲水温より高く保てる“部分恒温（地域性内温性）”をもつグループ。 |
| 体長・体重 |
ふつう全長2.5〜3.2 m、大型個体で3.8〜4.2 mの報告。体重は通常100〜300 kg、最大500 kg超の記録。
雄より雌が大型化。筋量が多く、爆発的な加速と跳躍（ブリーチ）で知られる。 |
| 分布海域 | 全世界の温帯〜亜熱帯外洋に広域分布（大西洋・太平洋・インド洋）。 日本近海では黒潮域・伊豆諸島・小笠原・三陸沖など外洋域で記録が多い。 |
| 生息深度 | 主に表層〜中層（0〜500 m）。季節・餌資源に応じて深度・緯度を広く回遊。 日周移動で夜間に浅層へ上がる傾向がある。 |
| IUCNレッドリスト |
EN（Endangered／絶滅危惧）（世界評価）。 成長が遅く産仔数が少ないうえ、延縄などの漁獲圧・混獲で世界的に減少。 |
| 識別ポイント |
|
最高速度は諸説あるが、短距離の瞬発力と高い体温が“海最速クラス”の名声を支える。スポーツフィッシングの対象となりやすく、資源管理が重要。
① 外見の特徴
アオザメ（Isurus oxyrinchus）は、鋭い円錐状の長い吻と、口を閉じても覗く細長い歯が目立つ高速回遊性サメです。 背側は金属光沢のある群青〜鋼青色、腹側は純白。体側の境界ははっきりしており、泳ぎの最中は“稲妻のようなシルエット”に見えます。 第一背びれは比較的小さく、胸びれ基部のすぐ後方に位置。胸びれは細長く鎌状で、先端が尖ります。
尾鰭は深い三日月型（ルネート）で、尾柄には左右一対の発達した横稜（ケイル）が走ります。 筋肉と内臓近くには網状毛細血管（レテ・ミラビレ）があり、周囲水温より体温を高めに保つ“部分恒温（地域性内温性）”を実現。 大型の黒い眼は高速遊泳時の視覚捕食に適応しています。
② 生態・行動
温帯〜亜熱帯の外洋表層〜中層（概ね0〜500m）を広域回遊。季節・餌資源に合わせて緯度・深度を大きく移動します。 日周的には夜間に浅層へ浮上し、昼にやや深場へ入る傾向（日周垂直移動）が知られます。
遊泳速度・加速性能はサメ類屈指。連続ジャンプ（ブリーチ）を見せることがあり、スピアのように水面を突き破ります。 単独〜少数で行動することが多く、海況・潮目・温度躍層などの“海の構造”を利用して効率的に獲物を探します。
③ 食性と狩りの方法
食性は高回遊性の魚食性が中心。主な獲物はサバ・カツオ・マグロ類などの回遊性硬骨魚、サンマ・ニシン類、 そしてイカ類（ツツイカ・アカイカ等）。地域や季節で構成が入れ替わります。
狩りの典型は、側線・視覚で群れの稠密部の“ほつれ”を見つけ、急加速の直線突進から体側で切り返して噛みつく戦術。 上顎の細長い歯は獲物に深く食い込み、逃げる前に切り裂き＋保持ができる形状です。 部分恒温により筋温を高く保てるため、反応速度・視覚性能・回復速度で優位に立てます。
④ 繁殖・成長
繁殖様式は卵食型卵胎生（無胎盤性胎生）。胚は母体内で孵化後、未受精卵（栄養卵）を摂取して成長します（oophagy）。 妊娠期間はおよそ15〜18か月と長く、産仔数はふつう4〜12尾（報告レンジ4〜25）。 出生時の全長は約60〜70cmで、すでに流線型の体つきと鋭い歯列を備えます。
成熟の目安は雄：約195〜205cm（7〜9年）、雌：約270〜300cm（18〜21年）※海域差あり。 寿命は30年以上と推定され、遅成長・晩熟・少産ゆえに資源回復が遅いタイプです。 産仔は沿岸〜陸棚縁の比較的暖かい浅場をナーサリーとして利用する例が報告されています。
数値は海域・研究により幅があります。図鑑では「海域別の成熟サイズ・産仔数・妊娠期間」を注記すると実用性が上がります。
⑤ 繁殖・成長（補足）
アオザメ（Isurus oxyrinchus）は卵食型卵胎生（無胎盤性胎生）で、胚は母体内で孵化後に栄養卵（未受精卵）を摂取して急速に成長します。 妊娠期間は約15〜18か月と長く、産仔数はふつう4〜12尾（海域や個体差で上下）。 出生時の全長は60〜70cmに達し、誕生直後から流線型の体と鋭い歯列を備えます。
- 繁殖サイクル：長妊娠＋休止期を含むため低い年産（隔年相当の報告も）。
- 成熟目安：♂ 約1.95〜2.05m（7〜9年）／♀ 約2.7〜3.0m（18〜21年）。
- 寿命：おおむね30年以上（長寿・晩熟）。
- ナーサリー：温暖な沿岸〜陸棚縁の浅場を新生仔・未成魚が利用。
遅成長・少産のため資源回復に時間がかかるタイプ。海域別に成熟サイズ・産仔数が異なるため、地域データの上書きが重要です。
⑥ 人との関係・保護
アオザメは延縄・流し網などで混獲されやすい高速外洋性サメで、肉・鰭・レクリエーション漁の対象にもなります。 一方で成長が遅く再生産力が低いため、漁獲圧に脆弱です。ヒトとの事故は稀ですが、船上や釣獲時は跳躍・急加速に注意が必要です。
| 主な脅威 | 混獲・目的漁獲／高い市場価値（肉・鰭）／誤放流（生残低下）／海域による過剰漁獲 |
|---|---|
| 保全状況 |
IUCN：EN（絶滅危惧）。CITES：附属書Ⅱ（国際取引規制）。 一部の地域漁業管理機関では保持禁止・即時放流や漁獲上限などの管理措置が導入。 |
| 混獲・釣獲対策 | 太軸サークルフック／ワイヤー長・枝縄長の最適化／深掛け回避の操業深度設定／素早い船縁リリース・デハッキングツール使用 |
| スポーツフィッシング | キャッチ＆リリース徹底（水面解釈・通気短時間・写真は水中で）／水温高時の長時間ファイト回避 |
消費者向けには「成熟サイズ未満は買わない」「産地の管理状況を確認する」などの選択が資源保全に直結します。
⑦ 観察・展示情報
強い回遊性と高速遊泳、高い酸素要求量のため、長期飼育・展示は極めて困難。 大規模な円形水槽と強力な循環・換水が必要で、世界的にも安定長期展示の例はほとんどありません。 観察は主に外洋釣り船・調査船、または高速で通過する個体の偶発遭遇によります。
- 観察のコツ：潮目・温度フロント・ベイトボール周縁。早朝・夕方の表層を高速巡航。
- 識別ポイント：小さめの第一背びれ＋深い三日月尾、円錐状の長い吻、口外に覗く細歯。
- 展示条件（仮収容時）：大型円形水槽／高流速の一方向流／高溶存酸素／単独飼育／衝突回避の視覚誘導（壁面模様）
- 教育展示：レテ・ミラビレ模型、歯列実物標本、尾柄ケイルの触察模型を併設すると理解が深まる。
図鑑ページでは、第一背びれ位置と尾びれ形のシルエット比較（ホホジロ・サメ類との対比）と、ブリーチ写真を並べると識別が容易になります。
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