ノコギリザメは、吻(ふん/鼻先)が長く伸び、その両側に歯のような突起が並ぶ「ノコギリ状の口先」を持つサメです。この“ノコギリ”は武器であると同時に、海底付近で獲物を見つけるための高性能な探知装置でもあります。見た目のインパクトが強い一方で、暮らしているのは沿岸の浅瀬というより、少し深い海の底近く。普段は人の目に触れにくい、渋い深場の住人です。
基本データ
- 和名:ノコギリザメ
- 英名:Sawshark
- 学名:Pristiophorus japonicus(日本近海で代表的に知られる種)
- 分類:ノコギリザメ目 ノコギリザメ科
- 全長の目安:1m前後〜1.5m級(種・個体差あり)
- 分布:日本近海を含む北西太平洋の沿岸〜大陸棚周辺
- 生息環境:砂泥底の底近く、やや深い海域(浅場より深場寄り)
- 食性:小魚、甲殻類、底生生物など
- 人への危険性:通常は高くないが、捕獲個体の“ノコギリ”は鋭いので取り扱い注意
見分けポイント:口先のノコギリと“ひげ”
最大の特徴は、吻の両側に並ぶ突起です。これは“歯”のように見えますが、実際には吻の縁に並ぶ鋭い構造で、獲物を切ったり叩いたりするのに使われます。さらにノコギリザメ類は、口先の途中に**ひげ(バーベル)**があるのが大きな識別ポイントです。ノコギリ状の口先を持つ生き物には似た見た目の仲間がいますが、ひげがあるかどうかは覚えておくと強い手がかりになります。
くらし:海底をなぞるように泳ぐ“底生ハンター”
ノコギリザメは、海底付近を低く泳ぎながら獲物を探します。深場は光が弱く、視覚だけでは餌を見つけにくいため、嗅覚や感覚器が重要になります。ノコギリ状の吻は、単なる刃物というより“前方に長く伸びたセンサー”の役割を持ち、海底の生き物の気配を拾いやすい形だと考えられます。
ノコギリの使い方:叩く、あぶり出す、切り裂く
捕食の場面では、吻を左右に振って獲物を叩いたり、砂の中に潜む生き物をあぶり出したりするように使われます。小魚の群れに突っ込んで混乱させるイメージで語られることもあり、“一撃で噛みつく”よりも、ノコギリで状況を作ってから確実に食べるスタイルが似合うサメです。
似ている生き物との違い:ノコギリエイとは別もの
名前が紛らわしいのが、ノコギリの口先を持つノコギリエイです。どちらも“ノコギリ状”ですが、分類はまったく別で、見た目も決定的に違います。ノコギリザメはサメらしい体つきで、口先にひげがあるのが特徴になりやすい一方、ノコギリエイはエイらしく胸ビレが大きく、体が平たくなります。混同されやすいので、図鑑としては別記事に分けておくと読みやすくなります。
人との関わり:深海漁の混獲で出会うことがある
生きた姿を海中で見る機会は多くありませんが、深場の漁で混獲されたり、標本・展示で紹介されたりすることがあります。ノコギリ状の吻は強い個性ですが、環境の変化や漁業の影響を受けやすい深場の生き物という側面もあり、分布や個体数の情報が十分にそろっていない地域もあります。



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