ロシアチョウザメ — 黒海・カスピ海を往来する“川をのぼる古代魚”

ロシアチョウザメは、黒海・アゾフ海・カスピ海と、それらに注ぐ大河を舞台に暮らすチョウザメの代表格です。サメのような流線形に見えますが分類はサメではなく硬骨魚で、背中から体側に並ぶ骨板(硬いウロコの列)と、下向きの口・ヒゲで“底の世界”を生き抜く体つきをしています。普段は沿岸の浅い海域で餌を食べ、繁殖期には川を遡上する回遊性(降海型)が知られ、キャビア文化とも深く結びついた一方で、近年は資源の悪化が強く懸念されています。

基本データ

  • 和名:ロシアチョウザメ
  • 英名:Russian sturgeon
  • 学名Acipenser gueldenstaedtii(属の扱いは研究で議論があり、文献によって表記が揺れることがあります)
  • 分布:黒海・アゾフ海・カスピ海と周辺河川
  • 大きさの目安:最大で全長2m超級として紹介されます
  • 保全状況:IUCNレッドリストで**CR(絶滅危惧IA類)**として扱われる情報が広く参照されています

見分けポイント:短めで丸い吻と、骨板の“鎧”

ロシアチョウザメは、チョウザメ類の中では吻(ふん:鼻先)が短めで丸いとされ、口は下向きでヒゲが4本あります。川底や海底の砂泥にいる獲物を探し、口で吸い込むように食べるのに向いた顔つきです。体側には骨板の列が通り、横から見ると“鎧を着た魚雷”のようなシルエットになります。

くらし:海で育ち、川で増える(降海型の回遊)

この種は海と川をまたぐ生活史が特徴です。海では沿岸〜河口域の浅い場所を利用し、川に入ると大河の深みや流れのある区間で過ごし、産卵期には上流へ向かいます。産卵には流れがある礫底などが重要とされ、川の改変やダムなどの影響を受けやすいタイプです。

食べ物:底生の貝・甲殻類・小魚が主役

ロシアチョウザメの食性は“底もの”中心です。貝類や甲殻類、小魚などを海底で探して食べ、幼魚期は甲殻類の比重が高いとされます。派手に追い回す捕食者というより、底をなぞって効率よく栄養を回収する、堅実なグルメです。

繁殖:成熟が遅いからこそ、回復もしにくい

チョウザメ類は総じて成熟が遅いことで知られます。ロシアチョウザメも例外ではなく、十分に成長してから繁殖に参加するため、乱獲や生息地悪化が重なると資源が戻りにくい構造があります。近年のIUCN評価で危機的とされる背景には、こうした“ライフサイクルの長さ”も関係します。

人との関わり:キャビア文化と保全の最前線

ロシアチョウザメはキャビアの文脈で語られることが多く、国際取引の規制や保全活動の対象にもなっています。IUCN側でもチョウザメ類の危機を強く発信しており、放流や繁殖支援など、各地で“希望をつなぐ”取り組みが進められています。

関連する魚

  • コチョウザメ(ステルレット):同じチョウザメ属で、小型・展示でも人気
  • オオチョウザメ(ベルーガ):同じ海域圏の超大型種、キャビア文脈でも並びやすい
  • ベステル:オオチョウザメ×コチョウザメの交雑種(養殖文脈)
  • シロチョウザメ:大型チョウザメ枠として比較に向く(展示で見かけやすい)

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