ツラナガコビトザメ(Squaliolus aliae)は、日本を含むインド・西太平洋に分布する小型のサメです。英名はSmalleye pygmy shark。全長約22cmという大きさが知られ、腹側には小さな発光器を備えています。
サガミザメ(Deania hystricosa)とは別種で、属も科も異なります。ツラナガコビトザメを調べるときは、名前だけでなく学名Squaliolus aliaeまで対応させると、ほかの深海ザメとの混同を避けられます。
名前・学名・分類の対応
| 和名 | ツラナガコビトザメ |
|---|---|
| 英名 | Smalleye pygmy shark |
| 学名 | Squaliolus aliae Teng, 1959 |
| 分類 | ツノザメ目 Squaliformes/ヨロイザメ科 Dalatiidae/ツラナガコビトザメ属 Squaliolus |
| 大きさの目安 | 全長約22cmが知られる小型種。これは平均体長や成長の上限を確定する値ではありません。 |
| 分布 | 日本、台湾、フィリピン、オーストラリア周辺などのインド・西太平洋 |
| 主な特徴 | 小型の暗色の体、腹側の発光器、第1背びれにある棘 |
学名・英名はFishBaseの種情報、科と属の和名はJAMSTEC BISMaL「ツラナガコビトザメ属」で照合できます。和名と学名の組み合わせは、国立科学博物館S-Netの標本記録にも掲載されています。
どれくらい小さい? 背びれと目にも注目
オーストラリアのFRDC報告書は、ツラナガコビトザメを現生のサメの中でも特に小型の種として紹介し、全長約22cmを挙げています。大きなサメの幼魚という意味ではなく、もともと体の小さい種です。ただし、最大記録は調べられた個体や資料によって更新されるため、「世界で最も小さい」と順位を断定するより、小型種の一つとして理解するのが適切です。FRDCの種別報告書(2023年・PDF)
体は暗褐色から黒色で、ひれの縁が淡く見えることがあります。第1背びれには棘がありますが、皮膚に隠れて目立たない場合もあります。第2背びれには棘がなく、肛びれもありません。「背びれが2枚なら棘も2本」と決めつけないことが、形を確認するときのポイントです。
英名のSmalleyeは「小さな目」を意味します。FishBaseの識別記述では、目の大きさを左右の目の間隔と比較しています。写真の印象だけで別の小型ザメと区別するのではなく、ひれや棘の有無も合わせて確認します。FishBaseの形態記述
生息地と深さ、日本の標本記録
FRDCの報告書では、日本・台湾・フィリピンからオーストラリア周辺にかけて分布し、大陸斜面の沖合で水深150m未満から2,000mに及ぶ記録が整理されています。分布は連続して確認されているわけではなく、小さく採集されにくいことから、未確認の海域にも生息する可能性が指摘されています。
昼は深い場所、夜は浅い場所へ移る日周的な鉛直移動が考えられていますが、すべての個体の行動が連続観察されたという意味ではありません。生息できる深さの記録と、普段どの深さに多いかという情報は分けて見る必要があります。FRDCの分布・生態情報
国内の具体例には、ミュージアムパーク茨城県自然博物館が所蔵する駿河湾産の標本があります。S-Netには1979年6月2日の雌の記録として掲載されています。これは日本での標本記録であり、同館で現在生体を展示しているという情報ではありません。S-Net標本番号Fi 59
腹側の発光器は何のため?
ツラナガコビトザメの皮膚には、多数の微小な発光器があります。2012年の研究は、発光器が主に腹側に分布することと、その発光の生理的な調節を調べています。体色が光を反射して見えるという話ではなく、発光器そのものが研究対象です。
腹側に広がる発光部は、海面から届く光に腹側の明るさを合わせ、下方から見た体の影を目立たなくする「カウンターイルミネーション」に適した配置と考えられています。これは発光の役割に関する研究上の解釈で、獲物を誘うために光ると確認されたわけではありません。Claes・Ho・Mallefet(2012)発光器の制御に関する論文
食べ物と繁殖、まだ分からないこと
食べ物として小型の中層性の硬骨魚や頭足類が知られています。繁殖は、卵を母体内で育てて子を産む卵胎生です。一方で、寿命や成長速度などは十分に分かっていません。深海にいるという理由だけで「必ず長寿」「成熟が極端に遅い」と、ほかのサメの特徴を当てはめることはできません。FishBaseの生態・繁殖情報、FRDCの寿命・個体群情報
保全評価については、IUCNサメ専門家グループの2026年4月刊行資料が、2025年更新の評価区分をLC(低懸念)と掲載しています。LCであっても、個体数や生活史の細部がすべて解明されたわけではありません。IUCN SSC Shark Specialist Group「Shark News」第13号・評価更新一覧(PDF)
サガミザメと取り違えないために
サガミザメの学名はDeania hystricosaで、アイザメ科・ヘラツノザメ属に属します。ツラナガコビトザメとは別の系統なので、サガミザメの出産動画、約1mという体長の説明、粗い皮歯の記述を、この種の紹介として流用することはできません。JAMSTEC BISMaL「サガミザメ」
分類からほかの種へ進むにはツノザメ目の特徴と代表種へ。図鑑全体から探す場合はサメ図鑑の一覧をご利用ください。



