一部のサメでは、卵が精子と受精せずに発生する「単為生殖」が確認されています。ただし、オスと離して飼っていたメスから子どもが生まれただけでは証明になりません。以前の交尾で受け取った精子を保存していた可能性と、DNAで区別する必要があります。
「オスがいない」と「父親がいない」は別
サメ類には、交尾から時間が経ってからも保存した精子を繁殖に使う例があります。そのため、飼育記録の「数年間オスが同居していない」という情報だけで単為生殖と断定するのは早計です。
まず同居・交尾・産卵の履歴を確認し、親と子の遺伝的な型を調べます。母親にない父親由来の型を持っているか、調べた場所で母親の型だけが現れるかが、繁殖の経路を検討する重要な材料になります。
トラフザメが繁殖方法を変えた例
2017年の研究では、以前はオスとの交尾によって子を残していたトラフザメが、オスから隔離された後に単為生殖をしたことが示されました。同じ水槽の娘にも、オスとの交尾歴がない状態で単為生殖が確認されています。
研究者は飼育状況だけで判断せず、複数のDNAの目印を使って親子を比較しました。以前の通常の繁殖による子には父親由来の型があり、その後の子では単為生殖に合うパターンが見られました。この比較が、精子の保存という説明と分ける根拠になります。
母親の完全なコピーとは限らない
単為生殖を「母親のクローンができる」と説明すると、遺伝的な変化を見落とします。サメで検討されている仕組みでは、母親が持つ遺伝情報の組み合わせがそのまま丸ごと複製されるとは限らず、同じ型がそろう度合いが高くなることがあります。
このため、子が生まれたという事実だけで、通常の交尾による繁殖と同じように多様性を維持できるとはいえません。卵の発生、ふ化、成長、その後の繁殖は、それぞれ別に確認すべき段階です。
すべてのサメに使える繁殖方法ではない
ウチワシュモクザメなどにも報告がありますが、観察されていない全種へ広げることはできません。また、卵生か胎生かという「子が母体の内外のどちらで育つか」と、受精するかどうかは別の分類です。
水族館の繁殖研究では人工授精も行われていますが、人工授精には精子を用います。単為生殖と混同せず、施設の発表がどの方法を示しているのかを読み分けると、希少なサメを増やす研究の意味を理解しやすくなります。
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参考資料
資料確認日:2026年10月10日。施設の記録は告知・資料の時点の情報です。


