スポッテッドラットフィッシュとは|Hydrolagus collieiとギンザメの違い

スポッテッドラットフィッシュ(Spotted ratfish)は、北東太平洋に分布するHydrolagus collieiというギンザメ類です。褐色の体に散る白い斑点と、先端が細く伸びる尾が目印。サメやエイと同じ軟骨魚類ですが、分類上は全頭類に属します。

日本の標準和名でギンザメと呼ばれるChimaera phantasmaとは別種です。この記事では、英名Spotted ratfishに対応するH. collieiの特徴と暮らしを紹介します。

基本情報とギンザメとの違い

記事で扱う種スポッテッドラットフィッシュ(英名のカタカナ表記)
英名Spotted ratfish
学名Hydrolagus colliei (Lay & Bennett, 1839)
分類全頭類 Holocephali/ギンザメ目 Chimaeriformes/ギンザメ科 Chimaeridae/Hydrolagus属
主な分布北東太平洋の北米西岸。アラスカからメキシコのバハ・カリフォルニア周辺、カリフォルニア湾など
暮らす場所沿岸から深い海の海底付近
繁殖卵のうに包まれた卵を産む卵生

学名と分類はITISの分類情報で確認できます。一方、JAMSTECのBISMaL「ギンザメ」が示す学名はChimaera phantasmaです。同じギンザメ科に含まれても属が異なるため、日本のギンザメの分布や生態をそのままH. collieiに当てはめることはできません。

白い斑点、長い尾、大きな胸びれ

体色は灰褐色から赤褐色で、頭部や胴には白い斑点があります。頭は大きく、吻は短く丸みを帯びています。太い胴から尾に向かって細くなり、尾の先は糸のように伸びます。大きな三角形の胸びれも、写真や映像で注目したい部分です。

背びれは2枚あり、第1背びれの前には長い棘があります。第2背びれは基部が長く、中央が低くくぼむ形です。肛びれはありません。白斑だけで見分けるのではなく、尾とひれの形も合わせて確認すると、この種の姿を捉えやすくなります。スミソニアン熱帯研究所の種解説・写真で各部の形を見比べられます。

泳ぐときには、胸びれをこぐように動かします。尾の形だけでなく、胸びれの使い方にも特徴があります。ワシントン州魚類野生生物局の解説も、この泳ぎ方を観察の手がかりとして挙げています。

どこの海にいる? 日本のギンザメとは分布を分けて考える

主な分布域は、北米大陸の西側に広がる北東太平洋です。アラスカからカナダ、アメリカ西岸、メキシコにかけて知られ、FishBaseにはコスタリカの記録も掲載されています。日本海や三陸沖を、この種の代表的な分布として紹介するのは適切ではありません。FishBaseの分布情報

泥底や岩のある海底付近で暮らし、冷たい海水を好みます。北側の分布域では比較的浅い場所にも現れますが、南側ではより深い冷水域に生息する傾向があります。「深海魚だから必ず深い場所にしかいない」と考えると、沿岸での観察記録を見落としてしまいます。Aquarium of the Pacificの生息環境解説

何を食べる? 板状の歯で海底の餌を利用する

口の中には、上あごに2対、下あごに1対の板状の歯があります。鋭い歯が何列も並ぶ典型的なサメの口とは、見た目が大きく異なります。海底付近で貝類や甲殻類、小魚などを食べる暮らしと合わせて見ると、歯の形にも注目できます。

食べ物としては、貝、カニ、エビ、多毛類、小型の底生魚などが報告されています。大きな魚を高速で追い回す姿を想像するより、海底の近くを泳ぎながら餌を探す魚として捉える方が、この種の生活に合っています。フロリダ自然史博物館の歯と食性の解説

卵のうを産む繁殖と、雄の頭部にある器官

スポッテッドラットフィッシュは卵生で、卵のうに包まれた卵を産みます。卵のうは海底に残され、その中で胚が育ちます。サメ・エイ・ギンザメ類を比べるときは、体の形だけでなく、卵を産むのか、子を産むのかという違いも観察の入り口になります。

雄には頭部の突起状の把握器官があり、腹びれ付近にも交接に関わる器官があります。頭の突起と腹びれ付近の交接器は位置も役割も同一ではありません。写真の頭部に突起が見える場合も、それを雌雄共通の特徴とは考えないようにしましょう。フロリダ自然史博物館の形態・繁殖情報

観察するときに見たいところ

  • 白い斑点があるかだけでなく、長く細い尾と第2背びれのくぼみを見る。
  • 泳ぐ映像では、大きな胸びれをどのように動かすかに注目する。
  • 資料や展示の名称に「ギンザメ」とあっても、学名がHydrolagus collieiかChimaera phantasmaかを確かめる。

背びれの棘は刺さると負傷の原因になります。見た目のおとなしさから、素手で触れてよい魚とは判断しないでください。漁業では混獲も報告されており、観察のしやすさと漁業の影響の小ささは別に考える必要があります。FishBaseの生態・棘の情報

サメの仲間との分類や姿を比べたい方は、サメ図鑑の一覧もご覧ください。

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