ヨロイザメ(Dalatias licha)は、青く発光する皮膚と、下あごに並ぶ大きな三角形の歯が特徴の深海ザメです。体が光ることは観察されていますが、その光を野外でどのように使うかには研究が続いています。
基本データ
| 和名/英名 | ヨロイザメ/Kitefin shark |
|---|---|
| 学名 | Dalatias licha |
| 分類 | ツノザメ目・ヨロイザメ科 |
| 分布 | 大西洋・太平洋・インド洋、地中海の深場 |
| 大きさ | 全長1〜1.4mほどの漁獲例が多く、FishBaseの最大記録は182cm TL |
| 主な環境 | 大陸棚の外縁〜大陸斜面。よく記録される水深は300〜600m |
| 食性 | 深海の魚類、ほかのサメ、頭足類、甲殻類 |
| 繁殖 | 母体内で育った仔ザメを産む無胎盤性の胎生(従来の卵胎生) |
青い光は何のため?
2021年の研究では、ヨロイザメの腹側から青い光が記録され、皮膚にある発光器の構造も調べられました。ダルマザメやカラスザメの仲間を含め、深海性のサメには発光器を備えた種類があります。
腹側の光で背景の明るさに溶け込む働きは「カウンターイルミネーション」と呼ばれます。ヨロイザメでは、獲物への接近や探索に役立つ可能性が論じられていますが、「獲物をおびき寄せるため」と一つの用途に決めつけることはできません。2026年の研究でも、光の測定結果と捕食との関係が検討されています。
上の歯と下の歯は別の道具
上あごの歯は細く、下あごには縁がぎざぎざした大きな歯が並びます。口もとには厚い唇があり、短く丸い鼻先と合わせて独特な顔に見えます。背びれは2枚ありますが、ツノザメ類で目立つような背びれ前方の棘はありません。
同じヨロイザメ科のダルマザメは、丸い傷跡を残す食べ方で知られる小型種です。ヨロイザメはその拡大版ではなく、魚類などを食べる別属の種。黒い体だけでなく、全長、口、歯、ひれの形を合わせて見ると違いがわかります。
繁殖と人との距離
仔は母親の体内で育ち、生まれた時点で全長約30〜42cmという記録があります。一度に産む数には資料・個体差があるため、すべての母親が同じ数を産むわけではありません。
主な生活の場は深い海で、人との日常的な接触は限られます。歯が鋭いことと、人を積極的に襲うことは別の話です。捕獲された個体を素手で扱ってよいという意味でもありません。
水族館で探すときの注意
今回参照した資料からは、来館者が現在いつでも見られる国内の生体展示は確認できませんでした。標本や写真で紹介される場合もあるため、展示案内では「生体」か「標本」かを確認してください。発光は明るい館内写真だけでは判断できず、普通の照明下で青く見えないことも発光能力の否定にはなりません。
関連する図鑑・コラム
参考資料
- FishBase:Dalatias licha — 分類・分布・全長・繁殖の種別記録
- Florida Museum:Kitefin shark — 形態・食性・近縁種との識別
- Mallefet et al. (2021) 発光の観察研究 — 腹側の青色発光と発光器、役割に関する仮説
- Counterillumination in a large demersal bioluminescent shark (2026) — 発光の実測と捕食への機能の検討
資料確認日:2026年10月4日。展示情報は記載した告知・資料の時点に基づきます。


