サメ肌のザラザラの正体は、皮膚を覆う「楯鱗(じゅんりん)」です。歯に似た小さな構造が並んでいますが、すべてのサメで同じ形をしているわけではなく、同じ個体の体の場所によっても違います。
普通の魚のうろことどう違う?
楯鱗は、皮膚に埋まる基部と表面へ出る部分をもち、象牙質やエナメロイドなど歯と似た組織からできています。英語のdermal denticleは、皮膚の小さな歯という意味です。口の歯が体へ移動してきたという意味ではありません。
微細な楯鱗が重なったり並んだりして、皮膚の表面に複雑な凹凸を作ります。目で見ただけでは滑らかに感じるサメも、拡大すると細かな構造があります。サメ肌という言葉から、すべてが同じ紙やすりの粗さだと想像しないことが大切です。
なでる方向で感触が違う理由
多くの楯鱗では突起や筋が尾の方向へ向きます。この向きに沿うか逆らうかで、引っかかり方が変わります。ただし、種、体の部位、楯鱗の形や密度によって表面の性質は異なります。
体験展示で触れる場合は、館が指定する場所と方法に従いましょう。野生のサメへ近づいて触感を確かめる必要はありません。拡大写真や模型でも、楯鱗の向きと並びをよく観察できます。
速く泳ぐためだけの鱗ではない
細かな溝や突起は水の流れに関わり、抵抗を減らす形として研究されています。一方で、摩耗や外部からの接触に対する保護も考えられます。ゆっくり泳ぐ深海ザメにも楯鱗があり、機能を速度だけで説明するのは不十分です。
2018年の形態研究では、サメの種の間だけでなく、一個体の異なる部位でも大きさ、形、間隔が変わることが確認されました。えらの周辺など、動きや流れが異なる場所では、隣り合う部分でも形が違う場合があります。
サメ肌をまねた製品を見るときの注意
楯鱗は水の流れを制御する表面の研究に役立っています。ただし、生きたサメは体を曲げて動き、楯鱗も曲面に配置されます。平らな板で得られた抵抗低減率を、そのまま全種の泳ぐ速さに置き換えることはできません。
サメ肌をまねた素材の説明では、何をまねたのか、どんな流速や条件で効果を測ったのかが重要です。水族館では、アオザメのような遊泳性の種と、海底で休む種の皮膚の拡大図を比べると、サメ肌という一言では表せない多様さが見えてきます。
関連する図鑑・コラム
参考資料
- NOAA Fisheries:12 Shark Facts — えら・噴水孔・楯鱗の基本
- Ankhelyiら(2018):Diversity of dermal denticle structure in sharks — 種と体の部位による楯鱗形態の違い
- Gabler-Smithら(2021):Dermal Denticle Diversity in Sharks — えら周辺の楯鱗の形態差と組織
- Experimental Studies of Bioinspired Shark Denticles for Drag Reduction — 2024年の生体模倣表面の実験と流体抵抗
資料確認日:2026年10月4日。展示情報は記載した告知・資料の時点に基づきます。


